イブニング・セッション

プレゼンテーション:渡邊 裕美
幾何曲線を用いた音響スパシアリゼーションのコントロール

スピーカによる音のディフュージョンにおいて、音源のパンニングの聴取は曖昧である。特にマルチチャンネル・システムにおいてはこの特性が顕著である。音響スパシアリゼーションにおいて、音の移動の軌跡をコントロールするために、角度と距離で表現される極座標方程式を用いた幾何曲線を用いることによって、音の移動の聴取を比較的容易にするのみでなく、少しのパラメータの設定で永続的に変化する運動を可能としている。
ここでは自作フルートと電子音響のための《Anamnèse》を例に出しながら、Maxによってリアライズされたバラ曲線、フェルマーの螺旋、レムニスケート曲線を始めとする幾何曲線の使用例を解説する。

幾何曲線を用いたAmbisonicスパシアリゼーションのためのMaxパッチ


フルートと電子音響のための《Anamnèse》コンサート用Maxパッチ


渡邊 裕美 Hiromi Watanabe
作曲/サウンドデザイン
東京藝術大学大学院音楽学専攻修士課程修了後、渡仏。 パンタン音楽院にて審査員満場一致の最優秀で電子音響音楽のDEMを取得、同時にSACEMから奨学金が授与される。サン=テティエンヌ大学コンピュータ音楽職業修士課程修了。繊細な色彩の移ろいが生み出す仮想の音響空間を求めて音楽制作を続けている。これまでにCCMC2011にてACSM116賞、並びにMusica Nova国際電子音響音楽コンクールミクスト曲部門第1位を受賞。またIna GRM主催のBanc d’essai2013(パリ)、NYCEMF2016、ICMC2016(ユトレヒト)に作品入選。フランスで活動するEnsemble Regardsの作曲家兼サウンドデザイナーとして電子音響音楽作品の初演・再演に携わっている。hiromiwatanabe.com